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 『ミルコのひかり』 2005年/イタリア クリスティアーノ・ボルトーネ監督 


 ミルコ
 

 可能性という言葉には、年齢や性別、そして障害は関係ない。だが、社会制度が強要していると、容易ではない。個人能力が優れていても、それを受け入れる社会環境が整っていなければ、宝の持ち腐れになってしまう。

 70年代初頭、イタリアのトスカーナ地方での出来事。

 映画をこよなく愛する少年ミルコが、不慮の事故で視力を失ってしまう。

 当時のイタリアの法律では、盲人は専門の学校を強制されていたらしく、彼は両親と離れて、ジェノヴァにある全寮制の学校に転校することになった。

 入学早々から、ミルコは盲人として拘束された生活を強いられことに反発する。その姿は、ジェームス・ディーンのようでもある。

 そんなふてくされた生活の中、偶然見つけたテープレコーダーに、彼は光を見出す。

 ミルコは、盲人になったことで、これまで気付かなかったものを感じていた。それは、音だった。彼はそのイメージをレコーダーに乗せて、オリジナルの音と言葉だけで録音を始める。自己表現の確立である。

 やがて、寄宿舎の管理人である娘フランチェスカなども加わり、クラス全体で製作していく。

 そんな子供たちの動向を見る視点が二つある。

 子供たちと同じ盲人である校長は、規律を重んじる人物。盲人には、盲人として生きる道があり、選択の自由はないと主張する視点。

 一方、彼らの行動に賛同するのが、教師のジュリオ神父。彼らの自由な発想に共感し、力になろうとする視点だ。

 だが、子供たちの行動を知った校長は、目くじらを立てて、やがてミルコを退学させてしまう。

 そんな校長の強引なやり方に、反発するジュリオ神父は、何とか彼を救おうと苦悩する。その時、廊下ですれ違った掃除のおばさんに彼は救いを求める。

 おばさんは言う。

 「わたしは、学がないから、よくわからないですけど、何か不満があったら言ったほうがいいですよ。誰も言わなければ気付きません。自分の主張を通さないと。誰かを怒らせても、思ったことは口に出さないと、後悔しますよ」

 その言葉に後押しされ、神父は子供たちに可能性をと、校長と真っ向勝負する。

 やがて、フレンチェスカの根回しで、デモ隊が学校を取り囲み、ミルコの退学の取り消しと、盲学校の改革を主張。そして、校長は、追われる身となってしまう。

 制度や習慣は、歴史を見てもわかる通り、時代とともに変化を遂げる。もちろん、守るべきものもあるが、時代にそぐわない感覚は、やがて淘汰されていく。

 この映画に登場する子供たちは、信念を持ち、豊かなイマジネーションによって、未来への大きな可能性を秘めていた。それもこれも、最初の主張があって初めて、周りが意識初め、やがて賛同するものがかわり、大きな波へと変わっていく。

 ようするに、子供たちの持つ情熱や想像力による無限の可能性を表現したこの作品から、個人的意見の尊重と社会の変革構造までもが見えてくるのである。

 この大きな主題とは別に、個人的に気がついた小さな気遣いを少し紹介しよう。

 ミルコ少年が先生にテープレコーダーのことを話さないよ、というシーンがある。意外と大人の目も持ち合わせていることで、この映画の奥深さを感じるのであった。

 ちなみに、この映画はイタリア映画界で活躍する音響編集者ミルコ・メンカッチ氏の少年時代を描いた実話である。

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04.13 (Tue) 02:23 [ 未分類 ] CM0. TB0. TOP▲
『イン・ディス・ワールド』 2002年/イギリス マイケル・ウィンターボトム監督作品
 

インディスワールド



 荒れ果てた大地に広がるパキスタンの難民キャンプ。

 不安と絶望と少しの期待を抱く人々が、時間を持て余し、他律的に生活している。


 この作品は、そこで暮らす少年ジャマールと従兄弟のエナヤットの亡命物語である。

 子供に未来を託すのは、どこの国の親も同じ。キャンプで厳しい生活をしている彼らにも夢が存在する。

 その夢を叶えようと、彼らはイギリスを目指して陸路で旅に出かけが、その先にはとてつもない試練が待ち構えていた。

 旅は旅でも、亡命という名の旅の試練には、単なる危険ではなく、生命に大きくかかわってくる。自国を捨て、自国の言葉を捨て、やがては自分自身を捨て、身体と精神をボロボロにしながらも、前へ前へと突き進む。頼みの綱はお金のみ。

 そんな過酷な旅を続ける二人から、人間の生命に対するエネルギー力の強さを感じるのだ。

 特に、フランスからイギリスに渡るシーンでは、かなりリアリティーに描かれていて、こちらまで緊迫する。

 この作品中、エナヤットが脱落する場面がある。その後、ジャマールが彼の動向について聞かれた時に話す台詞に注目。

 「彼はこの世界にいない」

 この短い発言から、強靭なる生命力を感じさせ、生きるためには得るものばかりでなく、捨てるものも必要なのだと、シビアな面も覗かせる。

 一般的に、われわれには夢や希望を誰もが持つことができる。だが、人によっては、生まれた場所や育った環境によって、それらを叶えることができない人がいる。

 そんな彼らから伝わる生命の迫力から、誰もが幸せについて、生き方について、考えさせられる作品なのではないだろうか。

 ちなみに、監督のウィンターボトムは、『日蔭のふたり』、ボスニア紛争を描いた 『ウェルカム・トゥ・サラエボ』、小粒なドラマ 『ひかりのまち』、音楽映画 『24アワー・パーティ・ピープル』、SF映画 『CODE46』 とジャンルの全く違う作品を次々に手がけ、高い評価を得ている。

 そして、この作品は、2003年ベルリン映画祭金熊賞を受賞している。



04.09 (Fri) 05:21 [ 未分類 ] CM0. TB0. TOP▲
  
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