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 「みなさんおはようございます。

 統括部長フッキーです。 

 何か最近刃物を使った事件が多発しており、こまったもんですなあ。
 
 
 さて、本日は、 『ムッシュのヒツジーランド奮闘記』第7話になります。 

 
 ~これまでのあらすじ~

 ニュージーランドに旅立った我が社の社長フッキー。

 いよいよ始まった学校生活。しかし、社長ムッシュ、体調もよくなり、だんだん学校に慣れてきたようです。それではどうぞ」 




 ★ 第7話 『課外授業と親父さん』



 とある日、午前中の授業を終えると、子供達が一斉に用意されていた二台のバンに真っ直ぐ乗り込んでいった。<何だ何だ~>

 オイラは、広い額に横長の皺を蓄えて訝しがった。<これから何が起こるねん>

 余炎去りやらぬ昨今、青雲に包まれた雛型の田園都市には、樹木がいたるところに点在し、辺りに清々しい香気を放っている。 

 五感を余すところなく刺激するこの街は、地球上において、ありのままの姿を今なお残す稀な環境かもしれない。 

 相変わらず落ち着きのない生徒たちを載せた車両には、まるでオープンカーに乗っているかのように強い南風が室内に吹き込んでくる。 

 突然、先日から練習している『サクラ』の合唱の声が車内で始まった。<おっ、嬉しいよねえ> 

 その後も、皆の知るかぎりの歌ネタを聴かされる。まるで、サーカス一団のような盛り上がりだ。<オイラはピエロで~す>

 ところで、子供の好奇心の旺盛さには、改めて見習う節があります。新たのことや物を知ることは、同時に知識と智恵を授かり、ヒトを大きく成長させるだろう。 

 また、日々教えるということは、同時進行で、そこから教わる事も多々在ることが気付いてきた。子供とは、不思議な生き物である。


 DSCF0044.jpg


 やがて、駆け付けた場所は、とある大きな公園。<平日やから誰もいてへんのかなあ>

 柔らかい太陽が辺り一面を包み込んでいた。 

 天然芝で埋め尽くされたその敷地は、ブランコや大きな滑り台など遊戯物自体は、日本のそのものとさほど変わらないものの、どこか艶やかである。

 まずは腹ごしらを済ませるのだが、子供たちは実に忙しい。各自とっとと食べ終えると一目散に目標物に走っていくのである。<ほんま子供は素直やねえ> 

 この大きな公園の中心部には、蛇行するように浅い水路が設けられていた。子供達の何人かは、そのなかに土足で入り込み、水遊びに興じる。

 また、ジャングルジムで時間を楽しむ児童や花摘みに夢中になる少女の姿など、グリーン上ではさまざまな遊びに夢中になる光景が映し出されていた。<ほんま元気やわ>

 束の間の楽しい昼下がりを過ごした後、我々は次の目的地に移動した。

 そこは見覚えのある風景の場所。リトルトンという小さい町である。 

 かつて、ダニエルとドライブで訪れたリトルトンは、小規模な坂の町の趣がある。

 我々は、メインストリートから少し登った見晴らしのいい車道の一角に降り立った。<この景色だよ。待っていました。でもここで何するの?> 

 公民館らしき建物の裏手の庭に回ると、献血車のような大型トラックが突然目に飛び込んできた。<なんでこんなとこに止まってんねん。まさか血抜かれるんちゃうかな。でも窓ほとんどついてないし。でも装甲車ではなさそうやし。何やろ?> 

 我々は、恐る恐る車輌の小さなステップを上がり、中に侵入する。

 皆が入ると、扉は閉鎖され、トラック内に小さな照明が灯された。すると、講師らしき中年女性が目の前に現れ、挨拶を始めた。 

 「みなさん、こんにちは」

 「こんにちは」

 「今日は、人間の体のしくみ及びその影響について勉強したいと思います。よろしくお願いします」

 “パチッパチッパチッ”<なんで暗闇やねん。今は点けてもいいんちゃう>

 「さて皆さん、人間の体は、何で出来ているかご存知ですか?」

 (シーーーーーーン)

 「実は、水なんですね」 

 (シーーーーーーン)

 「人間の体の60%は、水で出来ていると言われており、水がないとヒトは生きていけません。そして、………」

 途中省略。

 暗闇の中、等身大のヒトの模型が浮かび上がり、細胞や骨格、そして、体に及ぼす影響などについての講義を受けた。

 「えー、最後になりましたが、楽しい日々を過ごすのも健康な体があってこそできるのです。皆さん大切にしてくださいね。それでは、この辺で」 

 “パチッパチッパチッ!”<なかなか試行を凝らし、ええ教育してるやん> 

 お国変われば、教育方針もずいぶんと変わるものだ。わざわざ、こんな凝ったことしなくても、と思う部分はあるが、インパクトはかなり残るだろう。そして、時より見せる笑いのツボも押さえ、楽しく学ぶ指導方法を心得ている。

 途中省略したが、オイラが気にいったのはである。

 それと言うのも、人間の体の部分を歌詞に当て込み、リズムに乗せて一つの歌に仕上げているのだ。実に覚えやすく、意図がはっきりしていた。さすが、プロである。

 帰りの車内では、もちろん先ほど覚えたボディ・ソングを奮い立たすように、子供たちは唄い続けていた。


 Dscf1038.jpg


 さて、その夜のことである。ホストマザーと一緒に車で出かけることとなった。 

 「キーウィー、今から何処行くの?」

 「主人の所」

 「はぃ?」<確か家族は二人しかいないはず。だから、主人は、他界したんちゃうの> 

 「少し行ったところで住んでいるのよ」<何でやろ?>

 この先は、異国人の私には、どう対処すべきか悩むところだ。オイラは、不安の色を隠せないまま助手席でしばらく寡黙の人となった。

 だが、彼女の表情を横からチラリと一瞥すると、けっこう朗色を浮かべているのに気がついた。<ひょっとして喜んでいるのかなあ>

 やがて、とある平屋の住宅の前に赤バンが止まった。

 すると、浅黒く引き締まった表情の長身の初老が、戸口で出迎えてくれた。 

 短い白髪の顎には、立派な髭を蓄え、どしりとした風格すら感じる。10件ほどの住居が連なる長屋の一角の巣は、どう見ても一人暮らしであろう。

 このような状況では、なかなかこちらから根掘り葉掘り聴くことが、失礼に当たることになりかねるので、なるべく一般的な内容で会話を進める事に気を配った。

 「はじめまして、テツヤと申します。よろしくお願いします」

 「はじめまして(日本語で)」 

 「えっ!」<こうきたか、さて、何しゃべろ>

 しかし、言葉がなかなか出てこない。

 すると、

 「さあ、中に入って」

 「はい、失礼します」

 何処かたどたどしい。

 オイラは、マザーに背中を押されるように庇(ひさし)をくぐり、居間のソファーの一角にちょこんと腰を下ろした。

 「何か飲みますか?」

 「はい」

 「ビールは飲める?」 

 「えぇ」

 彼は踵を返し、奥の別室に向かった。やがて『DB』と大きく表記されたボトルビール二本と赤のグラスワインを運んできた。ワインは、どうやらマザー用らしい。 

 我々は、簡単に乾杯を変わると、彼が先に口火を開いた。

 「実は私、観光バスの運転手をしているんだよ。いつも日本人の観光客を乗せるから、挨拶ぐらいなら楽勝さ。日本人は皆、礼儀正しくていいお客さんだよね」 

 「ああ、そうなんですか」

 彼の話す表情から、日本人に対し、親近感が見受けられるようだった。 

 我々は、テレビでラグビーゲームを観戦しながら、二時間ほど談笑した。オイラは、いつの間にかビールを三杯消化していた。 

 オイラにとって複雑な心境の中での対面ではあったが、夫婦の仲が意外にもよく、談笑しやすかったが、それがかえってさらなる疑問の種にもなった。<じゃあ、何故別居してるんやろ?>
 
 マザーの酔いが醒めたころを見計らって、家路に向かうことになった。

 彼女がキーを差し込み、エンジンをかける。しかし、エンジンが何故かかからない。<これはどうしたことだ。もしかして…>

 案の定、フロントを見た。ライトがつけっ放しではないか。<やっぱりね>

 それをマザーに指摘すると、

 「どうしましょ、オホホ」 

 まだ、酔っているのかと思ったが、どうも素面のようだ。

 仕方ないという表情を浮かべた主人は、二人を自家用車に乗せると、本家まで何事もなく無事に送ってくれた。

 しかし、彼は家に立ち寄ることなく、あっさりと帰ってしまった。<考えれば考えるほどわからん関係やなあ。まあ、オイラの立ち入る話ではないから気にせんとこ>
 
 そんな一方で、以前から気になっていたことがあった。それは、先ほどのエンストでの場面でのことだ。

 マザーの先ほどの言動をみてわかるように、どんな不備な事態に遭遇して、いつも笑っていられる。そんな余裕は、どこからくるのだろうかと、ずっとオイラは思案していた。

 通常ならば、怒りや失望が先に出てくるものだと思う。 

 オイラが辿りついた予想は、やはりこの自然環境が生活のゆとりをもたらし、それが人間心理に大きく反映されているのではないだろうか。ゆっくりとした時間の流れ、さらに落ち着いた町並みなど穏やかな世界がいつも支配している。

 やはり、ヒトは生活の環境によって、人間形成されているに違いない。<当たり前か。しかし、オイラもできる限りいろんな意味で、余裕の持てるヒトになりたいなあ>



   
 ※ なお、当社の概要については、2007年9月28日の報告をご覧下さいませ。

 
 
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07.30 (Wed) 08:41 [ 未分類 ] CM0. TB0. TOP▲
  
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